名古屋~岐阜 名鉄を一周する

平成29年9月
 
 名鉄の名古屋岐阜間は、名古屋本線のルートと、犬山線から各務原線に入るルートの2通りがある。名古屋駅から同方向へ出て分岐し、岐阜駅でも両ルートが合流はしないため完全な環状型路線ではないものの、名古屋から岐阜、岐阜から名古屋と1週してくる事ができる。今回は、この疑似環状ルートを1週しつつ、途中途中で鉄道施設跡や新施設を見て回る事にした。

 今回スタート地点にした一宮駅へ到着。名古屋から岐阜までは名鉄名古屋本線とJR東海道本線が、岐阜から鵜沼までは名鉄各務原線とJR高山本線が並行しているため、途中下車を考えなければどちらでも移動可能。まずは名鉄かJR東海道本線で岐阜に向かおうとしたが、一宮駅北側での事故によりJRのダイヤが乱れていたので、名鉄を利用する事に。この日、踏切内の放置自転車と接触事故が起きたらしく、今伊勢の踏切周辺にパトカーが集まっていた。

1.名鉄岐阜駅 田神線ホーム跡

 名鉄岐阜駅に到着。各務原線に乗り換え、鵜沼方面に向かう。名鉄岐阜駅は本線、各務原線の2路線の分岐点だが、両線のホームは別々になっており、本線は高架上の4線、各務原線は地上ホーム2線+待避線1線となっている。これは、もともと各務原線のルートは各務原鉄道によって作られ、後に名岐鉄道(現在の名鉄)に取り込まれた別路線であったため。新岐阜駅に統合されるまでは長住町駅という名前だったという。

 今回1件目の鉄道施設跡はこの各務原ホーム。以前は路面電車が乗り入れ、名鉄田神線経由で美濃町線と繋がっていた。
 現在、待避線となっている北側の1線はもともと路面電車用のホーム跡だが、ホームは撤去、入り口部分は改築されテナントのコンビニとなっているためほとんど面影は無い。

 ちなみに各務原線ホームは棚上げがされていないらしく、車両のドアとの間に若干の差がある。また、ロフト岐阜店の入る駅ビルと自転車置き場や周辺ビルに挟まれており、本線のホームに比べ少々窮屈に感じる…バスターミナルやタクシー乗り場側、駅ビルがすっかり改装されているが、逆に一昔前の雰囲気が残る。路面電車の廃止以降、随分と岐阜駅前の様子も変わった。

2.新鵜沼駅~JR鵜沼駅連絡線跡

 岐阜を出発し、鵜沼へ向かう。基本的に田んぼと住宅街の繰り返しの景色で、時たまJR高山本線と並走する。鵜沼に近づいてくると比較的平坦だった線路は一気に坂を下り(羽場~鵜沼宿駅間)、住宅の並ぶ台地を横目に走るようになる。
 これは、各務原線が那加~羽場の間は木曽川の河岸段丘である各務原台地の上を通っており、羽場駅を超えた付近でその末端となるため。33.3パーミルという急勾配で、当然各務原線内ではもっとも急な区間。

 高山本線と並走しているうちに、名鉄が急カーブしたと思ったらもう新鵜沼駅に着く。鵜沼を超えると木曽川を渡り愛知の犬山市に入るので、この駅が各務原線岐阜の端になる。
 一応、各務原線と犬山線の境は鵜沼であるが、新鵜沼を終点とせずにそのまま犬山線に乗り入れるため、もっぱら犬山駅が各務原線の始点終点となっている。岐阜側から入線すると直進するルートのみ(2番線)で、折り返しホーム(3~5番線)は犬山側からしか入れない。駅が急カーブしている位置にあるためポイントの設置が困難なのか、構内に岐阜方面から来た各務原線列車が折り返せる場所が無い。新鵜沼駅で犬山線、各務原線両方面の列車を捌くのは難しい。

 折り返しのホームは各務原線ホームと異なりカーブする必要がないため、高山本線と垂直に近い状態になっている。

 名鉄、JRそれぞれの鵜沼駅の間には小さなロータリーがある。その上には、対照的に大きな存在感を放つ歩道橋が架けられており、名鉄側とJR側を行き来できる。2駅を合わせるとかなりの規模であるため、利便性と共に、地域の隔絶を解消するには確かに必要なのかもしれない。が、長大で無骨な歩道橋はあまりにも存在感がありすぎるため、賛否両論であったとも聞く。

 本日2か所目の鉄道施設跡は、新鵜沼駅の連絡線跡。
 かつて、名鉄の「北アルプス」が高山本線へ直通しており、そのために新鵜沼駅とJR鵜沼駅を繋ぐ連絡線があった。現在は既にレールは撤去済み。各務原線とは反対にカーブしていく道路が連絡線跡を利用している。

 連絡線はカーブした先でJR鵜沼駅構内に入り、高山本線に合流していた。新しく住宅街がつくられており、どうやらJR鵜沼駅の敷地の一部も住宅地に転用されたらしい。
 昔は待避線等があったはずなので、今はもうそこまでの設備を残しておく必要もなくなったという事でしょう。鵜沼を含めて古くなった駅の改築や、最近であれば旧車両の置き換えが行われ、ゆっくりとではあるが高山本線も更新が進んでいる。

 それにしても今風のおしゃれな雰囲気の住宅街な事で…
 歴史をウリにする犬山や鵜沼ではあるものの、名鉄犬山線を利用すれば名古屋まですぐ、各務原線と高山本線で岐阜へもそれほど時間はかからないため、アクセスは良好。名古屋で働く人にとっても住みやすい街かもしれない。

3.ツインブリッジこと新旧犬山橋

 新鵜沼駅のすぐ南には、犬山市と鵜沼を繋ぐ犬山橋がある。愛称・ツインブリッジの通り、2本の橋が並走しており、片方は名鉄犬山線、もう1本は道路橋となっている。名鉄の橋が旧犬山橋で、もともとは自動車と鉄道の併用の橋だった。(1925年完成) 2000年に道路橋が完成し、併用橋の役割を終えた。

 併用橋時代はきつきつのスペースで、両車線の車の間を名鉄車両が抜けていくヒヤヒヤものの光景が見られた。上り線下り線の間隔も狭く、基本的に橋上でのすれ違いもできなくなっていた。(時代が進み、車両が大型化し、安全に充分な間隔が確保できなくなったため。)
 そのため電車側はダイヤの乱れや設定が困難、車側にとっては渋滞の原因になっていた。

 名残としては、橋の手前で鉄道橋の方向を向いて延びている道路や、鵜沼側には鉄道橋手前に舗装が残っている部分がある。

 橋の下を鵜飼船が通り過ぎる。木曽川鵜飼の乗船場が、犬山橋のすぐ東側にある。橋の西側には、木曽川に面した犬山城が鎮座。
 犬山橋あたりを境に両岸の風景が一気に変わり始め、渓流の景色になっていく。

 犬山橋南側=木曽川左岸側は愛知県犬山市となる。橋と犬山遊園駅の間の踏切からは、橋名のプレートを確認できる。見ていたらミュースカイが通り過ぎて行った。

 高水敷が遊歩道になっているので、2本の橋を下から眺めることも可能。橋下付近には、鵜飼の発着場がすぐ傍であるため、何隻も鵜飼船が停泊していた。

4.かつての玄関口 犬山遊園駅

 昼時だったので、犬山の街で休憩する事に。お昼ご飯には「ことぶき屋」にて、アユ釜飯を食べた。やっぱり名物は味わっておきたい。一時期は古びた雰囲気ばかりだった気もする犬山のまちだが、最近は再開発に力が入っていて、お洒落なカフェなども増えた。カップル客や女子旅客も多い。体験できる店があるのか、夏であれば浴衣や着物で観光する人もいる。

 犬山の街を散策し、再び駅へ戻る。先ほどは鵜沼から犬山橋を歩いて渡ってきたが、今度はその隣、犬山遊園駅から乗車する。

 今はシャッターがしまり駅員の在住はしていないが、まるで遊園地の入り口の様な佇まいの駅舎は、かつてはこの駅からモンキーパークへのモノレールが延びており、観光地の拠点として作られた名残。また、観光地の玄関として作られたためか、構内はかなり広くとられている。それだけ多くの需要を想定したものだった。

 名古屋方面からやってきた利用客は地下道をくぐり、モノレールに乗ってモンキーパークへ移動していた。20数年前に来た記憶では、多くの人で混雑していた憶えがあるが、現在は逆に観光エリアの繁盛とは対照的な静かな雰囲気である。

 犬山城や古くからの街並みが残る地区へは犬山駅と比べて特別近いというわけではなく、モンキーパークへのアクセスについてもモノレールの発着点ではあったものの、犬山駅からのバスもあった。今はモノレールも駅ビルも無くなり、“遊園“という名前に哀愁が漂う。
 かつては、名古屋方面に向かい、犬山線に沿ってモノレール線が延びていた。少し行ったところで犬山線と分かれ、まっすぐ犬山駅へ向かう犬山線とは対照的に山の上へと進んでいた。

  
 
 ただ、徒歩で犬山城へ向かう場合は遊園駅からの方がわずかに近い(はず…)、また、鵜飼船の発着場へ行きたい場合はこの駅まで来る方が良い。すれ違った際に道を聞いてきた人がいたが、その人は成田山(犬山遊園駅から南東側)へ向かう様だった。モノレールがあった頃は、それに乗って一駅(乗車時間1分ほど)だったのだが。

5.高架化工事中の布袋駅

 犬山遊園から犬山線直通の列車に乗車し、そのまましばらく、今度は犬山線の布袋駅で降りた。この駅は現在高架化工事中で、名古屋方面から順に高架へ移している最中。地上駅時代とはすっかり風景も変わり、駅東側はピカピカの高架駅、工事中の元の駅部分を挟んで、西側は岐阜方面の仮駅が地上に残る状態。ちょうど高架駅が真ん中から半分だけ完成している状態。

 完成している名古屋方面ホームからは、まだ地上の仮駅状態の犬山方面ホームを見下ろせる。

 すでに完成した高架下は施設の形だけできているものの、まだ仮使用の状態でシャッターがしまったままの扉があったり、壁が仮設のものであったりする。まだ地上のままの岐阜方面ホームとは、仮設通路でつながっている。

 布袋駅の高架化により踏切での混雑が解消されるが、高架化される区間は布袋駅の前後のみで、両隣の駅は地上駅のまま残る。南へ少し行けば名神高速道路(そのすぐ下に石仏駅)、北へ行けば江南市中心部で江南駅(駅を高架化できるような敷地が用地が無い)となるため、必然的にこの区間しか高架化ができないためと思われる。

 この後は名古屋を経由して、スタート地点の一宮駅へ。これで今回の名古屋岐阜の環状ルート乗車は終了。